Memo

point  HDDより発掘(アウトブレイク)
2008年06月01日(Sun)21:34 point BIOHAZARD
小話。何か途中で終わってるけど上げる。

続きを読む
 背後でドアの開く音がして、ケビンは振り返った。
「ああ、次お前だっけ」
 彼の声音に、わずかながら疲れがにじんでいる。
「時間だ」戸を開けたデビットが指を立て、ケビンを部屋へ入るようにと促していた。
「そうだな。それじゃお先」
 膝に力を込め、立ち上がろうと地面を踏みしめると、細かく砕かれた瓦礫が靴底でじゃりっと鳴った。
 

 男五人のうち二人一組となってローテーションを組み、見張りを勤める。
 ジョージの提案を受け入れて、ラクーンシティでの脱出行を共にする彼らは、適当な雑居ビルの中で夜を明かす事となった。
 周囲の状況に気を配りやすいという点で、屋外での寝泊まりもはじめは検討されたものの、女性陣の体力を考慮して、妥協案ともいうべきこの意見が最終的に採用されたのだった。
 女の自分たちが、交替要員に含まれず「特別扱い」されていることに、アリッサは最後まで納得がいかない様子だったが、
「こういったものには適材適所がある。休める時には休んでもらった方が、こちらとしてもありがたい」
「君にはいつも助けられている。だから今は私達に任せてくれ」
とマークとジョージに説得され、しぶしぶ引き下がった。

「ずっと座ってたからだりーよ」
 ただじっと、来るかどうかも分からないゾンビどもの襲撃に備えるという、彼の性に合わない事をした為か腰をさすりながらこぼすケビンに、しかし寡黙な男はわずかに目線を動かしただけで地面に座り込む。
(相変わらず無愛想な奴)
 だがこれでも、あの酒場で初めて顔を合わせた時にくらべれば、ずいぶん打ち解けて来たほうだ。
 そう、あのいつも怯えたような目をした、日系人の娘も――

「いいなあ……オレも休みたいよ」
 ケビンが扉へ向かおうとすると、先ほどまでペアを組んでいたジムの羨ましそうな声が追って来た。彼はジョージの代わりに入ったところなので、もうしばらくこの任務から解放される事はない。膝を抱えてしょんぼりとする姿は愛嬌があると言えなくもなかった。
(アリッサ辺りに見られたらドヤされるな)
 そんな事を考えて笑いをこらえながら、「居眠りすんじゃねえぞ」とすれちがいざまに軽くジムの肩を叩き、彼は今夜の仮の宿となるそこへ足を進めた。

 大半の灯りが消えたままの室内は薄暗い。隅の方では、小さな人影がひとりソファに腰かけていた。
「あの……お疲れさまです」
「おう、ヨーコか。他の連中は?」
「ジョージとシンディは、上の階に何か役に立つものがないか、探して来るって……あとの二人は隣で休んでるわ」
「ヨーコも寝た方がいいんじゃないのか? 夜更かしは美容に良くねえぞ」
 ケビンの軽口に曖昧な笑みを返し、ヨーコはゆるくかぶりを振った。
「何かあった時、すぐに起こせる人間が、ここにもいた方がいいと思うし……。それに私、元々あまり眠らない方だから……」
「そりゃあ羨ましい。俺なんか、寝坊しまくって今月は遅刻七回だぜ」
 ケビンは両手を広げ、大げさなリアクションをした。
NAME  URL 
 
よろしければ『WRITE』ボタンをクリックしてください(戻る